「未経験からITに転職したいけど、スクールに100万以上は払えない」
そう考えたとき、職業訓練校という選択肢はかなり現実的な答えになります。国が運営するハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)なら、テキスト代程度の費用でIT系の技術を学べて、条件を満たせば訓練期間中に給付金も受け取れます。
ただ、メリットだけを並べた情報は多い割に、「実際にどう動けばいいか」がわかりにくい。ハローワークに何を言えばいいのか、選考は何をするのか、訓練中に就活はできるのか。そのあたりを、この記事で一通り整理します。
⏩ 急いでいる方はこちら
- 公共職業訓練 vs 求職者支援訓練の比較表はこちら
- 入校までの手順はこちら
- 訓練中の就活タイミングはこちら
- 今すぐできること(1分)はこちら
まず整理:「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」は別物
職業訓練校には2種類あります。名前が似ていて混同しやすいですが、対象者と給付金の仕組みが違うため、自分がどちらに該当するかを最初に確認することが重要です。
公共職業訓練は、雇用保険(失業給付)を受給できる人が対象です。在職中に会社都合や自己都合で退職し、ハローワークで求職申込みをしている状態であれば、ほとんどの場合こちらを選べます。
求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない人向けです。フリーランス・個人事業主だった人、雇用保険の加入期間が足りなかった人、給付期間がすでに終わった人などが対象になります。収入と資産の要件を満たせば、月10万円の職業訓練受講給付金が支給されます。
どちらも「ハローワーク経由で申し込む」という点は共通です。個人でコースに直接申し込むことはできません。
公共職業訓練 vs 求職者支援訓練 比較表
| 項目 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
|---|---|---|
| 対象者 | 雇用保険受給者(失業中) | 雇用保険を受給できない求職者 |
| 運営 | 国・都道府県・認定民間機関 | 認定民間機関 |
| 期間 | 3ヶ月〜2年(IT系は主に6ヶ月) | 2〜6ヶ月(IT系は主に3〜6ヶ月) |
| 受講料 | 原則無料(テキスト代等は自己負担) | 原則無料(テキスト代等は自己負担) |
| 給付金 | 失業給付が延長される形で継続支給 | 月10万円(職業訓練受講給付金)※要件あり |
| 給付金の要件 | 雇用保険を受給中であること | 月収8万円以下、世帯収入25万円以下など |
| 交通費 | 支給あり | 支給あり |
| 選考方法 | 書類・筆記・面接(機関による) | 書類・筆記・面接(機関による) |
| 申込み先 | ハローワーク窓口 | ハローワーク窓口 |
(参考:ハローワークインターネットサービス https://www.hellowork.mhlw.go.jp/ 厚生労働省、2025年度)
IT系コースの種類:何を学べるか
職業訓練のIT系コースは大きく4つに分かれます。自分のゴールに合ったコースを選ぶことで、その後の就職活動で使えるスキルセットが変わります。
プログラミング系コースは、PythonやJava、HTML/CSS/JavaScriptなどを学びます。Webアプリケーション開発・システム開発の入門として位置づけられており、修了後はSES(システムエンジニアリングサービス)企業やIT系スタートアップへの就職を目指す人が多い。ただし、未経験から6ヶ月で即戦力になれるかというと、現実はそれほど甘くない。コーディングの基礎を固めて「学び続けられる人材」であることを示すのが現実的な使い方です。
ネットワーク・インフラ系コースは、CCNAやネットワーク基礎、LinuxサーバーやActive Directoryの操作などを学びます。ITサポート・ヘルプデスク・インフラエンジニアを目指す場合はこちら。プログラミングより求人の幅が広く、未経験採用に積極的な企業と相性がいいコースです。
PCサポート・ITサポート系コースは、OfficeソフトやWindowsの管理、ネットワークの基本設定など、社内SEやPCサポート担当者として必要なスキルを学びます。IT業界への入り口として取り組みやすく、職業訓練修了後に即就職できる可能性が比較的高い。
DX・データ分析系コースは比較的新しく、ExcelやPower BI、Pythonを使ったデータ分析の入門を学びます。事務・営業職からのキャリアチェンジを目指す層に需要があります。
どのコースが開設されているかは地域と時期によって異なります。住んでいる都道府県のハローワークか、「ハロートレーニング」の検索ページで現在募集中のコースを確認してください。
(参考:ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)コース情報 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/ 厚生労働省)
入校までの手順
入校までの流れを知らないと、ハローワークで何を言えばいいかわからず時間を無駄にします。手順を把握してから窓口に行くと話が早い。
第一ステップはハローワークへの求職登録です。職業訓練を受けるには、ハローワークに求職申込みをしていることが前提になります。在職中でも申込み自体は可能ですが、訓練の受講中は「訓練専念」が基本で、仕事との両立は認められないケースが多い。離職後に手続きするのが一般的な流れです。
第二ステップは訓練コースの選定です。ハローワークの窓口か、ハロートレーニングの検索サイトで希望のコースを見つけます。コースによって選考日・開講日・定員が異なるため、複数のコースを比較しておくと安心です。
第三ステップはジョブカードの作成と職業訓練受講申込みです。ハローワークの担当者に「職業訓練を受けたい」と伝えると、手続きの案内があります。ジョブカード(職歴・資格・希望職種をまとめたシート)を作成し、訓練を受けることが就職に必要かどうかの相談をします。ここで「受講が必要」と認められると、受講あっせん状が発行されます。
第四ステップは選考です。多くのコースで書類選考と面接があります。プログラミング系コースは筆記試験(基礎的な数学・論理思考)が課されることもある。「なぜそのコースを受けたいか」「修了後にどんな仕事に就きたいか」を具体的に説明できるよう準備しておく必要があります。倍率は地域とコースによって大きく違いますが、人気のあるIT系コースでは競争がある場合もあります。
選考を通過すると入校決定通知が届き、開講日から訓練がスタートします。
訓練中の就活との両立方法
「訓練が終わってから就活」では遅い、というのが現実です。6ヶ月コースなら、後半の3〜4ヶ月目には転職活動を並行して動かし始めるのが現実的なペースです。
なぜかというと、訓練修了後に一から転職活動を始めると、修了から内定まで2〜4ヶ月かかることも珍しくない。そうなると訓練修了から半年近く無収入の期間が続く可能性があります。後半から動き出すことで、修了のタイミングに合わせて内定を取りにいくスケジュールが組めます。
ただし、訓練を「出席率8割以上」で修了することが給付金受給の条件です。就活のために訓練を大量に欠席すると、給付金が止まる場合があります。面接のための欠席は認められるケースが多いですが、ハローワークの担当者に事前に確認しておくと安心です。
転職エージェントへの登録は訓練の前半で済ませておくと効率がいい。書類添削・面接対策を並行して進めることで、後半から本格的に応募できる状態を作れます。IT未経験・第二新卒向けに強みを持つエージェントとして、マイナビ転職・doda・ワークポートが使いやすい。地方在住の場合はリモート面接に対応しているエージェントを選ぶのが現実的です。
(関連:未経験からITサポート・ヘルプデスクへの転職完全ガイド)
求職者支援訓練の給付金:月10万円を受け取る条件
求職者支援訓練の給付金(職業訓練受講給付金)は月10万円ですが、条件を満たしていないと受け取れません。主な要件は以下のとおりです。
- 本人の月収が8万円以下
- 世帯全体の月収が25万円以下(または世帯年収が400万円以下)
- 世帯の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいる土地・建物以外に不動産を所有していない
- 訓練の8割以上に出席している
- 同一世帯に他の給付金受給者がいない
収入と資産の要件が厳しめなので、フリーランスや短期バイトを掛け持ちしていた場合は注意が必要です。収入条件に引っかかると給付金は受け取れませんが、訓練自体は無料で受けられます。
(参考:職業訓練受講給付金について 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/kyuusyoku/index.html)
失敗しやすいポイントと対処法
訓練中に「思っていたのと違う」となるケースで多いのが、コース選びのミスです。「プログラミングが学べる」と思って入ったコースで、実際には実務から遠い内容だったというパターン。事前に訓練校の見学会・説明会に参加するか、過去の受講生の口コミを調べることで回避できます。
もう一つは「訓練修了後の職種イメージが甘かった」問題です。IT系訓練校を修了しても、自動的にエンジニアになれるわけではありません。訓練を「学習の入口」として使い、修了後も自主学習を続けながら就職活動を進める前提で臨むことが大事です。
地方在住の場合、IT系コースの選択肢が都市部より少ない点も現実として把握しておく必要があります。通える範囲にコースがない場合は、オンラインで受講できる求職者支援訓練のコースを探すという選択肢もあります。
(関連:IT転職の志望動機の書き方2026年版)
今すぐできること(1分)
まずハローワークインターネットサービスのコース検索(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)を開いて、自分の住んでいる都道府県でIT系コースが現在募集中かどうかを確認してください。開講時期・定員・選考日が表示されます。気になるコースが見つかったら、最寄りのハローワークに電話して「職業訓練の申込みについて相談したい」と伝えるのが最初の一歩です。
よくある質問
Q. 在職中でも職業訓練校に申し込めますか?
A. ハローワークへの求職登録は在職中でも可能です。ただし、訓練期間中は「求職活動に専念する」ことが前提であり、仕事を続けながら訓練を受けることは基本的に認められていません。離職前に情報収集だけ進めておき、退職後に本格的な申込み手続きをするのが一般的な流れです。
Q. 40代・50代でも職業訓練校でIT転職はできますか?
A. 訓練の受講自体に年齢制限はありません。ただし、IT業界への未経験転職は若い世代のほうが採用されやすいのが現実で、40代以降は「即戦力につながるスキル」を前面に出す必要があります。PCサポートやネットワーク管理など経験年数より実務対応力が評価される職種を中心に狙うと就職につながりやすくなります。
Q. 選考で落ちることはありますか?
A. あります。特に人気のあるプログラミング系コースは定員に対して応募が集まるため、書類と面接で落ちるケースがあります。「修了後の就職意欲が明確かどうか」を確認されることが多いため、「なぜそのコースを選んだか」「どんな仕事に就きたいか」を具体的に話せるよう準備しておくことが対策になります。
Q. 訓練中に転職エージェントに登録してもいいですか?
A. 問題ありません。むしろ後半からの本格的な就職活動に備えて、前半のうちに登録して書類準備を進めておくことをおすすめします。面接で欠席する場合はハローワーク担当者に事前に相談しておくと、給付金への影響を確認できます。
Q. 訓練修了後、すぐに就職できますか?
A. コース修了後に内定が出ていないケースは多くあります。訓練後も求職活動を続けながら、エージェントのサポートを使って応募を続けることになります。後半から就活を開始しておくと、修了のタイミングで内定が出やすくなります。40社規模の応募を覚悟しておくと気持ちが楽になります。実際、書類選考の通過率は低い時期が続くことも珍しくなく、継続して応募し続けることが結果につながります。
著者:S
ITサポート職への転職経験をもとに、職業訓練校の利用から転職活動の実際まで情報を発信しています。掲載情報は公開時点のものです。最新の給付金要件・訓練コース情報は必ずハローワーク窓口または厚生労働省の公式サイトでご確認ください。