物価高で副業を始める人が増えるなか、見落とされがちなのが確定申告だ。「簿記なんてわからない」と身構える人も多いが、会計ソフトを使えば専門知識がなくても帳簿付けは乗り切れる。副業を始めたら何を準備し、どう記録すればいいのかを整理する。
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- 確定申告が必要かどうかの判定表
- 会計ソフトでやる帳簿付けの流れ
- 今すぐできること(1分)
副業に確定申告が必要になるライン
会社員が副業をする場合、給与以外の所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、原則として確定申告が必要になる。
ここで大事なのは「収入」ではなく「所得」で判定する点だ。たとえば副業で年30万円の報酬を得ても、必要経費が12万円あれば所得は18万円となり、申告が不要になる場合がある(住民税の申告は別途必要なことがある)。
| 状況 | 確定申告 |
|---|---|
| 給与以外の所得が年20万円超 | 原則として必要 |
| 給与以外の所得が年20万円以下 | 所得税の申告は原則不要(住民税申告は要確認) |
| 副業も給与(アルバイト等)の場合 | 金額により必要なことが多い |
| 医療費控除などで還付を受けたい | 20万円以下でも申告したほうが得な場合あり |
判定の基礎になるのが、収入と経費の記録だ。記録がなければ所得が計算できず、申告の要否すら判断できない。だからこそ、副業を始めた時点から帳簿付けを習慣にしておくことが重要になる。
出典:国税庁 確定申告の手引き(一般的な制度の概要)/Googleトレンド急上昇(2026年5月29日取得)
簿記の知識がなくても会計ソフトで乗り切れる
「帳簿付け」と聞くと簿記の専門知識が必要に思えるが、今は会計ソフトがその大半を肩代わりしてくれる。
会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携し、入出金を自動で取り込む。利用者がやるのは、取り込まれた取引に「これは売上」「これは経費」とタグ付けしていく作業が中心だ。仕訳のルールはソフトが提案してくれるため、簿記の用語を完璧に理解していなくても進められる。
とはいえ、基礎の考え方を知っておくと判断が速くなる。簿記そのものの学習価値についてはAI時代でも簿記の資格は意味があるかで整理しているので、本格的に学びたくなったら参考にしてほしい。
会計ソフトでやる帳簿付けの流れ
ステップ1は、副業用の口座とカードを分けることだ。プライベートと混ざると、どれが経費か後で判別できなくなる。専用口座を作り、副業の入出金はそこに集約する。これだけで記帳の手間が大幅に減る。
ステップ2は、会計ソフトに口座・カードを連携することだ。連携すると、取引が自動で取り込まれる。あとは取り込まれた取引を、売上か経費かに分類していく。
ステップ3は、経費の判断だ。副業に直接必要な支出が経費になる。たとえば在宅作業のための通信費・パソコン・参考書などが該当しうる。プライベートと共用のもの(自宅の電気代など)は、使った割合に応じて一部だけ経費にする「家事按分」という考え方を使う。
ステップ4は、申告書類の作成だ。多くの会計ソフトは、入力した帳簿から確定申告書を自動で作成する。e-Tax連携を使えば、オンラインで提出まで完結できる。
経費にできるもの・注意点
経費の線引きで迷う人は多い。基本は「その副業のために使ったか」だ。事業と無関係な私的支出は経費にできない。
迷ったときは、領収書やレシートを必ず残しておく。経費にできるか後で判断するにも、記録がなければ計上できない。電子データで保存する場合のルール(電子帳簿保存法)もあるため、レシートはアプリで撮影して保存しておくと安心だ。
また、所得が増えると住民税や社会保険料に影響することもある。会社に副業を知られたくない場合、住民税の納付方法を確認しておくとよい。税額の計算や控除は個別事情で変わるため、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談するのが確実だ。
経費にできるものの具体例
「これは経費になる?」で迷う場面は多い。在宅の副業でよく登場する支出を整理しておく。あくまで一般的な例で、最終的な判断はその支出が副業に必要だったかによる。
| 支出 | 経費の扱い |
|---|---|
| 副業用に買ったパソコン・周辺機器 | 経費になりうる(高額は減価償却) |
| 仕事に使う通信費・電気代 | 使った割合に応じて一部(家事按分) |
| 参考書・オンライン講座 | 副業に必要なら経費になりうる |
| 取引先との打ち合わせ交通費 | 経費になりうる |
| 私的な飲食・趣味の支出 | 経費にできない |
家事按分とは、自宅の通信費や電気代のうち、副業に使った割合だけを経費にする考え方だ。たとえば自宅の作業時間が1日の2割なら、通信費の2割を目安に計上する、といった具合になる。割合の根拠を説明できるよう、考え方をメモしておくと安心だ。
規模が大きくなったら青色申告も視野に
副業の所得が増えてきたら、青色申告を検討する価値がある。
青色申告は事前の届出と複式簿記での記帳が必要になるが、その分メリットが大きい。最大の利点は「青色申告特別控除」で、要件を満たせば所得から一定額を差し引ける。所得が増えるほど、この控除の節税効果は大きくなる。
複式簿記と聞くと難しそうだが、会計ソフトを使えば自動で複式簿記の形式に整えてくれる。利用者は取引を分類するだけでよく、簿記の専門知識がなくても青色申告に対応できる。簿記の基礎を学んでおくと判断がさらに速くなるため、AI時代でも簿記の資格は意味があるかで学ぶ価値を確認したうえで、簿記2級を3か月で独学する方法に進むのも一つの道だ。
まずは白色申告で記帳に慣れ、所得が安定して伸びてきたタイミングで青色へ移行する——この順番なら、無理なくステップアップできる。
今すぐできること(1分)
副業の入出金を記録する場所を1つ決める。すでに副業を始めているなら、スマホのメモやスプレッドシートでもいいので、「いつ・いくら・何の収入か(経費か)」を今日から書き始める。
会計ソフトを使う予定なら、無料プランやお試し期間のあるサービスにアカウントだけ作っておく。早く始めるほど、申告時期に過去をさかのぼって記憶を頼りに入力する苦労がなくなる。記録は「貯める」より「都度つける」が圧倒的に楽だ。
よくある質問
Q. 副業の所得が20万円以下なら何もしなくていいですか?
A. 所得税の確定申告は原則不要ですが、住民税の申告は別途必要になることがあります。また、20万円以下でも医療費控除などで還付を受けたい場合は、確定申告をしたほうが得になることがあります。お住まいの自治体のルールを確認してください。
Q. 簿記3級くらいは取っておくべきですか?
A. 必須ではありませんが、取っておくと帳簿の意味が理解でき、経費判断や節税の感覚が身につきます。会計ソフトを使うだけでも申告は可能なので、まずはソフトで運用し、必要を感じたら簿記を学ぶ順番でも問題ありません。
Q. 白色申告と青色申告、どちらがいいですか?
A. 副業の規模が小さいうちは手間の少ない白色申告から始める人が多いです。所得が増えてきたら、控除額の大きい青色申告(事前の届出と複式簿記が必要)を検討すると節税につながります。会計ソフトは青色申告にも対応しています。
Q. 会計ソフトは有料のものを選ぶべきですか?
A. 取引件数が少ないうちは無料プランでも足りることがあります。ただし確定申告書の自動作成やサポートが必要になると、有料プランのほうが結果的に時短になります。無料お試しで使い勝手を確かめてから決めるのがおすすめです。
Q. 経費のレシートはいつまで保管が必要ですか?
A. 申告内容の根拠となる書類は、原則として数年間の保管が求められます(申告区分により年数は異なります)。紙のレシートは色あせるため、スマホで撮影して会計ソフトやクラウドに保存しておくと、紛失や劣化を防げます。
確定申告は、仕組みを知らないと不安だが、会計ソフトと「都度記録」の習慣があれば過度に恐れる必要はない。副業を始めたその日から記録を始めることが、申告時期の自分をいちばん助けてくれる。まずは入出金を書き留める場所を一つ決めることから始めたい。
著者:S