新NISAの積立を始めたばかりで、評価額が含み損になり不安を感じている人は少なくありません。下落相場の中で「このまま続けていいのか」「売った方がいいのか」と迷う場面は、投資を続けていれば誰にでも訪れます。ここでは、狼狽売りにつながりやすい不安な気持ちと、判断材料になる事実を分けて整理します。
含み損が出るのは投資の前提。まず知っておきたいこと
株式や投資信託で運用する以上、評価額は日々上下します。含み損とは、購入時の価格より評価額が下がっている状態のことで、売却して初めて損失として確定するものです。裏を返せば、売らずに保有を続けている限り、含み損はまだ確定していない数字にすぎません。
特に積立を始めたばかりの時期は、投資元本に対する評価額の振れ幅が目立ちやすいタイミングです。購入回数がまだ少なく、平均購入単価が直近の価格に近いため、少しの値下がりでも評価額全体がマイナスに見えやすくなります。これは新NISAに限らず積立投資の仕組み上どうしても起こることで、投資の失敗を意味するものではありません。
積立投資は、購入時期を分散させる仕組みでもあります。毎月の買付を続けていくうちに、購入価格の平均(取得単価)がいろいろな時期の価格でならされていくため、一時的な下落の影響は口座を続ける時間が長くなるほど相対的に小さくなっていく性質があります。始めたばかりの今の含み損だけを見て、投資全体の結果がもう決まったかのように考える必要はありません。
新NISAを始める前にどんな準備をしておくと下落局面でも慌てにくいかは、新NISAを始める前に整える3つのことでも整理しています。まだ確認していない人は合わせて見ておくと安心材料になります。
過去の暴落と回復にかかった期間(データで見る)
感情だけで判断しないために、過去の株価下落がどう推移してきたかを見ておきましょう。リベラルアーツ大学の記事「【暴落が心配!】つみたてNISAで20年後の暴落を気にしなくていい理由を解説」(https://liberaluni.com/nisa-bouraku、2023年12月17日更新)では、1925年から2020年までの米国株式市場のデータをもとに、株価が高値から20%以上下落した「暴落」が9回あったことが紹介されています。
| 時期 | 主な下落率 | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| 1929年(世界恐慌) | -83% | 約16年 |
| 1946年 | -22% | 3年 |
| 1961年 | -22% | 2年 |
| 1968年 | -29% | 3年 |
| 1972年 | -43% | 4年 |
| 1987年(ブラックマンデー) | -30% | 2年 |
| 2000年(ITバブル崩壊) | -45% | 6年 |
| 2007年(世界金融危機) | -50% | 4年 |
| 2020年(コロナショック) | -30% | 約5ヶ月 |
回復までの期間は最短で約5ヶ月、最長で約16年と幅がありますが、同記事で紹介されている9回の暴落は、いずれもその後の水準まで回復しています。ここで押さえておきたいのは、これはあくまで過去の実績であり、次に起こる下落が同じ期間で回復すると保証するものではないという点です。それでも、長期のデータの中で下落したまま戻らなかったというケースが見当たらないことは、不安なときに思い出す価値のある事実です。
暴落そのものへの備え方については、同大学の別記事「投資初心者が絶対に知っておくべき暴落の歴史と3つの対策を解説」(https://liberaluni.com/crash-history)でも、生活防衛資金の確保・ポートフォリオのリスク調整・心理的な準備という3つの対策が紹介されています。
「売っていい時」と「売らない方がいい時」の見分け方
含み損そのものは、売却の理由にはなりません。感情で判断する前に、次の3つを確認する考え方が役に立ちます。
1つ目は、生活防衛資金の状態です。リベラルアーツ大学では、会社員であれば生活費の半年分を目安に生活防衛資金を確保しておくことが紹介されています(https://liberaluni.com/living-defense-fund)。この水準に届いているなら、今の含み損だけを理由に生活が立ち行かなくなるわけではないと考えられます。
2つ目は、そのお金をいつ使う予定かという点です。冠婚葬祭や医療費、失業など、生活防衛資金だけでは足りない事態が起きて近いうちに現金が必要になっているなら、含み損があっても売却を検討する場面になり得ます。
3つ目は、投資の目的が変わっていないかという点です。老後資金のつもりだった資金を、数年以内に使う予定に変えた場合などは、当初の計画を見直すきっかけになります。この3つのどれにも当てはまらず、評価額が下がって怖いからという理由だけで売ることは、一般的には推奨されていません。含み損の状態で売却すると、その時点で損失が確定し、その後に回復局面が来ても恩恵を受けられなくなるためです。
投資対象の商品選び自体に迷いがある場合は、新NISAはオルカンとS&P500どっちがいい?も参考にしてみてください。商品への理解が浅いことが、値動きへの不安を大きくしている場合もあります。
不安になったときにやること・やらないこと
不安を感じたときほど、感情のまま動く前に確認できる事実から整理するのが基本です。
やることは、まず投資元本と評価額の差を数字で確認し、生活防衛資金が目安に届いているかを見直すことです。次に、そのお金をいつ使う予定だったのか、投資を始めたときの目的を思い出します。目的や期間が変わっていなければ、含み損があっても計画を継続する理由になります。
あわせて、保有している商品の値動きの幅が、今の自分の生活や性格に合っているかを見直すのも一つの方法です。株式の比率が高いほど値動きは大きくなりやすいため、今回の下落でどれくらい不安を感じたかは、自分がどの程度の値動きに耐えられるかを知る手がかりになります。不安が大きすぎた場合は、次の積立から資産配分を見直すことも選択肢に入ってきます。
やらないことは、評価額を見た直後に売却の手続きを進めることです。SNSや不安を煽るニュースの見出しだけで判断することも避けたい行動です。積立設定を止めたり再開したりを繰り返すことも、かえって判断を複雑にしてしまいます。
気持ちの整理にAIを使うのも一つの方法です。感情と事実を分けて書き出すと、自分が何に不安を感じているのかが見えやすくなります。次のようなプロンプトを使ってみてください。
NISAで積立投資をしています。現在の状況を整理したいので手伝ってください。
・投資を始めた時期:(例:2025年〇月から)
・毎月の積立額:(例:3万円)
・現在の評価額の状況:(例:含み損〇円、投資元本に対して〇%のマイナス)
・投資の目的:(例:老後資金、教育資金など)
・いつ使う予定のお金か:(例:15年以上先の予定)
・今、不安に感じていること:(自由に書く)
上記を踏まえて、
1. 「事実」と「感情」を分けて整理してください
2. 私の投資目的や期間から見て、今回の含み損が致命的な問題かどうかを中立的な視点で整理してください
3. 今すぐ判断する必要があることと、判断を急がなくていいことを分けて教えてください
※最終的な売買判断は自分で行うための整理として使い、AIの回答をそのまま投資判断の根拠にはしません。AIの回答はあくまで思考整理の材料です。何を売買するか、いつ売買するかを最終的に決めるのは自分自身であることは変わりません。
よくある質問
Q. 含み損が出たら、積立を一時停止した方がいいですか?
A. 目的や期間を再確認したうえで判断することが大切です。下落局面で積立を止めると、価格が低いときに購入する機会を逃すことにもなります。含み損が出ているという理由だけで反射的に止める必要はないと考えられます。判断に迷う場合は、まず生活防衛資金の状態を確認しましょう。
Q. 含み損は何%になったら危険なサインですか?
A. 含み損の割合だけで一律に危険度を判断できる基準はありません。重要なのは、そのお金をいつ使う予定なのか、生活資金に影響が出ていないかという点です。数字の大きさよりも、自分の生活や目的に照らして考える方が実態に近い判断ができます。
Q. 新NISAは元本割れすることがありますか?
A. 新NISAは非課税で投資できる制度であり、値動きそのものを保証する仕組みではありません。株式や投資信託で運用する以上、購入時より評価額が下がる元本割れの状態は起こり得ます。この性質は新NISAに限らず、価格が変動する金融商品全般に共通します。
Q. 暴落時に買い増しした方がいいですか?
A. 買い増しは、余裕資金があり自分のリスク許容度に合っている場合に検討される選択肢の一つとされています。ただし、生活防衛資金を削ってまで買い増しをすることは推奨されていません。無理のない範囲で、もともと決めていた積立のルールを継続することが基本的な考え方です。
Q. 狼狽売りしてしまった後、どうすればいいですか?
A. 一度売ってしまった判断を後から責める必要はありません。まずは生活防衛資金や積立額など、今の状況を整理し直すことから始めましょう。自分がどんな場面で不安を感じやすいかを振り返っておくと、次に同じような下落が来たときの備えになります。
まとめ
含み損は、投資を続けている限り誰にでも起こり得るものです。大切なのは、下がった数字の大きさそのものより、生活防衛資金は足りているか、そのお金をいつ使う予定なのかを、感情と切り離して確認することです。過去のデータでは長期的な下落局面もいずれ回復に向かってきましたが、これは将来を保証するものではなく、判断材料の一つとして受け止めてください。
✅ 今すぐできること(1分):NISA口座の管理画面を開き、投資元本と評価額を並べて確認してください。その差額が、今すぐ使う予定のあるお金かどうかを自問するだけでも、感情的な判断から一歩引いて考えられるようになります。