新社会人になり、NISAをいくらから始めればいいのか悩んでいる人は多い。初めての給与明細を見て、思ったより手取りが少なくて驚いた人もいるだろう。奨学金の返済や一人暮らしの生活費もある中で、投資に回す金額は簡単には決められない。この記事では、手取り額を基準にした積立額の考え方と、金額を決める前に確認しておきたい前提を整理する。
新社会人がNISAを始める前に確認したい2つの前提
金額を決める前に、確認しておきたいことが2つある。順番を間違えると、せっかく始めた積立を数か月で止めることになりかねない。
生活防衛資金はあるか
投資の話をする前に、まず「生活防衛資金」の有無を確認したい。病気やケガ、転職、家電の急な故障など、予定外の出費に備えてすぐ引き出せる預金のことだ。
リベ大(リベラルアーツ大学)では、資産形成の第一歩として生活防衛資金の確保を挙げており、会社員の場合は生活費の半年分を目安にすると案内している(リベラルアーツ大学、2026年7月確認、https://liberaluni.com/living-defense-fund)。新社会人はこの半年分がまだ貯まっていないケースがほとんどのはずで、その状態なら積立額は低めに設定し、まず預金を優先するほうが無理はない。
生活防衛資金がほぼゼロのまま積立額を大きくしてしまうと、急な出費のときに投資分を取り崩す羽目になる。NISAは長期で持ち続けることを前提にした制度なので、始めてすぐに売ることになると、本来のメリットがほとんど活きない。
固定費を把握しているか
家賃・通信費・保険・サブスクリプションなど、毎月ほぼ固定でかかる支出を把握できているかも、積立額を決めるうえで欠かせない。家計簿アプリ(マネーフォワードMEやZaimなど)に給与明細と口座を連携させれば、1か月分の支出は数分で可視化できる。
固定費を把握しないまま「とりあえず月3万円」で積立を始めると、家賃の更新月や、住民税が始まる2年目に資金繰りが厳しくなりやすい。金額を決める前に、手取りから固定費を引いた「残り」がいくらなのかを、まず数字で確認しておきたい。
手取りからの「貯蓄率」で考える積立額の目安
前提を確認したら、次は具体的な金額の考え方に入る。
収入に対して貯金と投資をどれくらい回せているかを示す指標に「貯蓄率」がある。貯金と投資の合計金額を、手取り収入で割ったものだ。金額そのものではなく割合で考えるこの方法は、リベ大をはじめとする家計改善系の情報でたびたび取り上げられていて、貯蓄率20%が一つの目安としてよく紹介される。年代や世帯を問わず使われる一般的な目標値であり、新社会人だけに向けた特別な数字ではない。
手取り月収別に、貯蓄率20%を基準にした場合の目安額を整理すると次のようになる。
| 手取り月収 | 貯蓄率20%の合計目安 | 積立に回す分の目安 |
|---|---|---|
| 18万円 | 3.6万円 | 1万円〜2万円 |
| 20万円 | 4万円 | 1.5万円〜2.5万円 |
| 23万円 | 4.6万円 | 2万円〜3万円 |
この3つの手取り帯は、実際の初任給データとも近い。マイナビの調査では2026年卒の大卒初任給(額面)平均は22万5,786円(マイナビキャリアリサーチLab、2026年確認、https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250226_92878/)、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年結果)では大卒初任給24万8,300円という結果が出ている(厚生労働省、2026年7月確認、https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/53-1.html)。手取りは額面の8割前後になるのが一般的な目安で、住民税がかからない1年目はこれよりやや多く残ることが多い。
表の「積立に回す分」は、貯蓄率20%の目安額をそのまま投資に全振りするのではなく、一部を現金の生活防衛資金や当面の出費に残したうえでの試算だ。引っ越し費用やスーツ・仕事道具の購入など、新社会人1年目は現金の出費が重なりやすい。20%をまるごと積立に入れてしまうより、一部を現金で確保しておくほうが、家計の余力という意味では安全に働く。
貯蓄率20%はあくまで目標であって、届かなくても問題ない。リベ大でも、月1万円のような少額からまず積立を始めて、生活に慣れてから徐々に増やしていく考え方が繰り返し紹介されている。1年目から満額を目指す必要はどこにもない。
なお、新NISAのつみたて投資枠は年間120万円まで使える制度で、月に換算すると10万円分に相当する(金融庁、2026年7月確認、https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/)。ここで検討している月1万円〜3万円程度の積立は、上限にはまったく届かない。枠を気にするより、無理なく続けられる下限を意識するほうが実践的だ。積立額の目安が決まったら、次は「何に積み立てるか」を選ぶ段階になる。代表的な選択肢の比較は新NISAはオルカンとS&P500どっちがいい?で整理しているので、あわせて確認しておくといい。
自分の場合の金額をAIと一緒に整理する
早見表はあくまで目安で、奨学金の返済額や家賃の水準によって無理のない金額は人それぞれ変わる。自分の手取りと固定費を当てはめて考えたいときは、ChatGPTに家計の内訳を伝えて相談する方法もある。
新社会人1年目です。以下の条件で、無理のない毎月の新NISA積立額の目安を提案してください。
・手取り月収:○○円
・家賃:○○円
・奨学金の返済額:○○円(なければ0円)
・その他の固定費(通信・保険・サブスクなど)の合計:○○円
・生活防衛資金としてすぐ引き出せる貯金:○○円
貯蓄率20%(貯金+投資の合計÷手取り)を1つの目安にしつつ、生活防衛資金が少ない場合は積立額を抑える提案も含めてください。金額は「無理のない範囲」と「やや頑張る範囲」の2パターンで出してください。出てきた提案は、あくまでたたき台として扱いたい。AIは計算や選択肢の整理は得意でも、こちらの家計に対する不安の大きさまでは分からない。最終的な金額は、提案を見ながら自分の感覚と照らし合わせて決めるのがいい。
一人暮らし・実家暮らし別の無理のない金額感
同じ手取り額でも、一人暮らしと実家暮らしでは投資に回せる余力がかなり違う。
一人暮らしの場合、家賃・水道光熱費・食費がすべて自分の手取りにのしかかる。前述の「固定費を把握しているか」がとくに重要になるのはこのケースだ。家賃が手取りの3割を超えているなら、積立額を増やすより先に住居費そのものを見直したほうが、家計全体は安定しやすい。無理をせず、早見表の下限に近い金額から始めるだけでも十分だ。
実家暮らしの場合は、住居費や食費の負担が軽い分、同じ手取りでも投資に回せる余力は大きくなりやすい。ただし余裕があるからといって、いきなり手取りの半分近くを積立に回すのは避けたい。将来一人暮らしを始めるときの初期費用や、家賃負担が増えたあとの生活を考えると、現金の貯蓄も並行して積み上げておくほうが、後々の選択肢は広がる。
ボーナスをどう使うか
初めてのボーナスが出ると、まとまった金額を一気にNISAへ入れたくなるかもしれない。ただ、全額を投資に回すのは避けたほうがいい。
考え方としては、ボーナスを2つか3つに分けて使うとシンプルになる。生活防衛資金がまだ半年分に届いていなければ、まずそこに補充する。次に、2年目から本格的に始まる住民税や、当面の急な出費に備える分を確保する。残りをNISAの積立に上乗せするかどうかは、そのあとで考えれば十分だ。
まとまった金額を一度に投資する一括投資と、毎月の積立に少しずつ上乗せする方法のどちらが良いかは、そのあとの相場次第で結果が変わるため、どちらが正解とは言い切れない。初めての投資でまとまった金額を一度に入れると、相場が下がったときの心理的な負担が大きくなりやすい。慣れないうちは、ボーナス分も毎月の積立に分けて回すほうが、続けやすさの面では安心感がある。
よくある質問
Q. 月いくらから新NISAを始めればいいですか?
A. 証券会社によっては月100円や1,000円といった少額から積立を設定できる。貯蓄率20%を目安にしつつ、生活防衛資金が確保できていない場合は、それより少ない金額から始めても問題ない。金額の大きさより、無理なく続けられるかどうかを優先したほうが長期的にはうまくいきやすい。
Q. 奨学金を返済中でもNISAはやるべきですか?
A. 返済を優先しながら、並行して少額の積立を始めることは可能。ただし返済で家計が圧迫されている状態で積立額を増やすのは避けたい。返済額と固定費を差し引いた手取りの残りを把握したうえで、生活防衛資金の確保、無理のない範囲での積立、という順番で考えると安全だ。
Q. NISA口座はどこで開けばいいですか?
A. ネット証券であればスマホから10分程度で申し込みが完了する。楽天証券での具体的な手順は楽天証券でNISA口座を開く全手順にまとめている。
Q. 積立額はあとから変更できますか?
A. 変更できる。証券会社のサイトやアプリからいつでも増額・減額の設定が可能で、停止も自由にできる。昇給やボーナスのタイミングで見直す前提で、最初は少なめの金額から始めても問題ない。
Q. ボーナスは全部NISAに入れてもいいですか?
A. 全額を投資に回すのはすすめない。生活防衛資金の上積みや翌年の住民税への備えとして一部を現金で残し、残った範囲で積立に上乗せするかを判断するほうが、家計への負担は小さくなる。
まとめ
新社会人のNISAは、正解の金額を探すことより、続けられる金額から始めることを優先したほうがうまくいく。生活防衛資金と固定費を先に把握し、貯蓄率20%を一つの物差しにしながら、無理のない範囲で積立額を決めていけばいい。
✅ 今すぐできること(1分)
給与明細か銀行アプリを開いて、直近の手取り額を確認してほしい。その数字に0.2をかけた金額が、貯蓄率20%の目安額になる。そこから固定費と生活防衛資金の状況を差し引いて、無理のない積立額を考える出発点にしてほしい。
※本記事は投資判断の助言ではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。
執筆:S