NISAで積立投資を続けていても、複利効果がどれくらい効いているのか実感しづらいという声はよく聞く。ここでは数字と表を使って、複利効果の仕組みと「続けることの意味」を確認していく。
証券口座の運用画面を毎月眺めていても、資産額は増えたり減ったりを繰り返すだけで、「複利で増えている」という手応えは正直つかみにくい。だが複利は、短期の値動きの中では見えにくいだけで、時間という条件がそろったときにはっきり形になる仕組みだ。まずは複利効果そのものの中身から整理していく。
複利効果とは何か(単利との違い)
複利効果とは、運用で得た利益をそのまま元本に組み入れて再投資することで、利益が利益を生んでいく状態を指す。NISAのつみたて投資枠で投資信託を保有し続けると、分配金を出さずに運用会社が内部で自動的に再投資するタイプの商品が多いため、意識しなくても複利の仕組みが働き続けることになる。
対して単利は、最初に投資した元本に対してのみ利益がつく計算方法だ。仮に元本100万円・年率5%で運用した場合、単利であれば毎年5万円ずつしか増えないが、複利であれば2年目は「100万円+5万円」に対して5%がつくため、増え方が徐々に加速していく。この差は運用初期にはほとんど気づけないほど小さいが、10年、20年と時間が経つにつれて開いていく。
ここで誤解しやすい点がある。複利効果は投資信託という商品自体が持っている特別な性質ではない。あくまで「利益を再投資し続ける」という行動から生まれる結果であり、再投資をやめて利益を引き出してしまえば、その時点で複利は止まる。NISAで長期の積立を続けること自体が、複利効果を働かせ続けるための条件になっている。
期間による差を数字で見る(10年・20年・30年のシミュレーション比較)
複利効果の実感は、具体的な数字で見たほうがつかみやすい。ここでは毎月3万円を積み立て、想定年率5%で運用した場合を仮定し、金融庁の「資産運用シミュレーション」(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/)で試算した結果を比較する。年率5%はあくまで仮定の数値であり、将来の運用成果を保証するものではない。
| 積立期間 | 積立元本 | 試算上の評価額(年率5%仮定) | 運用益部分 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 360万円 | 約466万円 | 約106万円 |
| 20年 | 720万円 | 約1,233万円 | 約513万円 |
| 30年 | 1,080万円 | 約2,497万円 | 約1,417万円 |
※月3万円・想定年率5%(複利、税引き前)で毎月積み立てた場合の試算。実際の運用成果を保証するものではなく、相場環境によって評価額は上下する。
この表を見ると、元本は期間に比例して単純に増えていくのに対し、運用益部分は期間が延びるほど元本以上のペースで膨らんでいくことがわかる。10年時点では運用益は元本の3割弱にとどまるが、30年になると運用益だけで元本を上回る規模になる。これが複利効果の「時間が長いほど効果が大きくなる」という性質だ。NISAを始める前にまず積立額や生活防衛資金を整えておきたい人は、新NISAを始める前に整える3つのことも参考にしてほしい。
過去の暴落があっても長期では回復してきた実績
複利効果の話をすると、必ず出てくるのが「暴落したら意味がないのでは」という不安だ。実際、株式市場は過去に何度も大きな下落を経験している。1929年の世界恐慌では米国株式市場が大きく下落し、2000年代のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、数年おきに大きな調整が起きてきた。
一方で、金融庁が公表している試算では、国内外の株式・債券に資産と地域を分散し、毎月同額を積み立てる投資を20年間続けた場合、過去の実績上は元本割れという結果が確認されていないとされている(金融庁 NISA特設ウェブサイト https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/)。あくまで過去のデータに基づく傾向であり、将来も同じ結果になると約束するものではないが、保有期間が長くなるほど下落局面の影響が薄まりやすいという傾向自体は押さえておく価値がある。
暴落の局面では評価額が目に見えて減るため、積立をやめたくなる気持ちが出てくるのは自然なことだ。ただし複利効果は「保有し続けている期間」に対してかかる。含み損が出た状態で不安になったときの考え方は、新NISAの含み損で不安になったらで具体的に整理しているので、暴落局面に直面したときはあわせて確認してほしい。
「続けること」自体が最大の武器になる理由
複利効果を最大化する条件は、実は特別な銘柄選びでも高度なタイミング分析でもなく、単純に「積立を止めないこと」に尽きる。理由は2つある。
1つ目は、複利のカーブが後半になるほど急になる性質だ。前のシミュレーション表で見た通り、運用益は序盤ほど小さく、後半になるほど大きく積み上がる。つまり複利効果の恩恵の大部分は、運用期間の後半に集中している。途中でやめてしまうと、いちばん効果が大きくなる時期を自分で手放すことになる。
2つ目は、価格が下がった月には同じ3万円でより多くの口数を買えるという、いわゆるドルコスト平均法の効果だ。暴落局面でも淡々と積立を続けることで、平均購入単価が下がり、回復局面で評価額が戻りやすくなる。相場を見て売買のタイミングを計るより、機械的に続けるほうが結果的に有利に働きやすい。
とはいえ、20年後・30年後の資産推移を頭の中だけでイメージするのは難しい。こういう場面ではAIに数字の整理を手伝ってもらうのが実用的だ。自分の積立額と想定年数を伝えれば、推移の目安を表形式で出してもらえる。
毎月の積立額:3万円
想定年率:5%
積立期間:20年
上記の条件で、複利効果によって資産がどう増えていくかを
5年ごとの推移表(元本・評価額・運用益)に整理してください。
あわせて、運用益が元本を上回るのは何年目あたりかも
目安として教えてください。出てきた数字はあくまで仮定に基づく目安であり、将来の運用成果を保証するものではない点は忘れずに、続けるモチベーションを保つための「見える化」ツールとして使うのが現実的な距離感になる。
よくある質問
Q. 複利効果はどんな商品でも同じように得られますか
A. 分配金を再投資するタイプの投資信託であれば複利の仕組みが働きやすいが、分配金を都度受け取るタイプでは再投資されない分、複利効果は弱まる。NISAのつみたて投資枠対象商品の多くは再投資型のため、基本的には保有を続けるだけで複利が働く設計になっている。
Q. 年率5%という前提は現実的な数字ですか
A. 過去の株式市場の平均的なリターンを踏まえた一つの仮定にすぎず、将来の運用成果を保証する数字ではない。相場環境によって実際のリターンは大きく上下するため、シミュレーションはあくまで目安として使い、複数の利回りパターンで試算しておくと現実の振れ幅をイメージしやすい。
Q. 暴落中に積立を止めたほうが安心ではないですか
A. 短期的な安心感は得られるかもしれないが、複利効果とドルコスト平均法の両方の恩恵を手放すことになる。不安が強いときほど機械的な継続が結果を左右しやすいため、まずは自分の資金計画に無理がないかを見直し、それが問題なければ積立自体は継続する選択肢を優先的に検討したい。
Q. 複利効果を実感しやすくする工夫はありますか
A. 毎月の評価額の増減だけを追うのではなく、年に1〜2回、積立元本と評価額の差を確認する習慣をつけると変化が見えやすい。前の章のようにAIに数字を整理してもらい、表の形にしておくと感覚としてもつかみやすくなる。
まとめ
複利効果は投資信託という商品そのものの性質ではなく、利益を再投資しながら長期で保有し続けることで生まれる結果だ。月3万円・年率5%という仮定の試算でも、10年・20年・30年と期間が延びるほど運用益部分の伸び方は加速していく。過去の暴落局面も、資産と地域を分散した20年間の積立では元本割れが確認されていないという金融庁の試算があり、時間を味方につけることの意味は数字の面からも裏付けられている。
✅ 今すぐできること:金融庁の資産運用シミュレーション(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/)を開き、自分の毎月の積立額と想定年数を入力して、10年後・20年後の試算額を一度自分の目で確認してみてほしい。