2026年5月22日、日経平均株価が終値で6万3339円をつけ、史上最高値を更新しました。AIラリーの継続を背景に、東証プライム市場の1日の売買代金は10兆円を超え、相場には独特の熱気がただよっています。SNSを開けば「乗り遅れた」「今から買って大丈夫か」という声があふれている状況です。
(出典:Googleトレンド急上昇・2026年5月23日取得:日経平均、史上最高値、NISA)
結論から書きます。NISAで積立投資をしている人にとって、最高値更新のタイミングでやるべきことは、ほぼ「何もしない」です。むしろ、相場が盛り上がっているときほど、勢いに任せた行動が将来のリターンを削ります。この記事では、いま絶対にやってはいけないことと、落ち着いて確認したい3つのポイントを整理します。
⏩ 急いでいる方はこちら
- NISA投資家がやってはいけない3つのこと
- 今やるべき3つの確認
- 高値掴みパターン vs 積立継続パターンの比較
- よくある質問
相場が最高値のとき、「何もしない」がいちばん難しい
最高値という言葉には不思議な力があります。普段は冷静な人でも、ニュース速報や同僚との雑談で「6万3339円」と聞くと、ふと口座を開きたくなる。それ自体は自然な反応です。
ただ、ここで覚えておきたいことが一つあります。「何かしなければ」と感じる相場こそ、判断を誤りやすい瞬間です。
積立NISAの設計思想は、相場が高いときも低いときも淡々と買い続けることにあります。最高値を見て積立額を増やす、あるいは慌てて売る。どちらの行動も、本来の積立投資の土台を崩してしまいます。
「何もしない」は、何もしていないようで、実は最も難しい判断です。
NISA投資家がやってはいけない3つのこと
1. 慌てて利確する
「もう十分上がった。一度利確して現金化しよう」という発想は、相場が高いときほど浮かびがちです。ですが、NISA口座での利確には注意点があります。
NISAは非課税の枠を活用する制度です。途中で売却すると、その期間に積み上げてきた「複利の土台」を自分から崩すことになります。再投資しても、もう一度ゼロから時間を積み直すことになる。これがやっかいで、複利の効果は最初の数年では実感しにくく、後半に効いてきます。
利確の判断は、「今の相場」ではなく「ライフイベント」で行うのが基本です。住宅購入・教育費・老後など、お金が必要になるタイミングで初めて売る。それ以外は持ち続ける。これが積立NISAの王道です。
2. 積立額を増額する
「今もっと積み立てておけば、もっと儲かるはず」。最高値のニュースを見て、こう感じる人は多いはずです。
しかし、最高値のときに積立額を増やすのは、定義上「高値掴みのリスクを増やす」ことと同じです。下がったときに増額するならわかるのですが、上がってから増やすのは、平均取得単価を上げる方向に働きます。
積立額は相場で決めるのではなく、収入と支出のバランスで決めるべきものです。最高値を理由に増額するのではなく、ボーナスや昇給など「自分の家計の変化」を理由に増額する。順番を間違えると、生活防衛資金まで投資に回してしまうリスクがあります。
3. 個別株や流行のテーマに手を出す
最高値が話題になると、SNSでは「次の本命」「これから来る銘柄」といった情報が一気に増えます。NISAの成長投資枠を使って個別株を買おうとする人も増えてきます。
ここがやっかいで、NISAの非課税枠は1年あたりの上限が決まっています。個別株や流行のテーマ型ファンドに枠を使ってしまうと、本来コア資産として積み立てるべき指数ファンドの枠が削られます。さらに、個別株は値動きが激しく、思惑が外れたときの損失が大きくなりがちです。
NISA枠は「長く持てるものに使う」が基本。話題に乗って枠を消費するのは、もったいない使い方です。
今やるべき3つの確認
「何もしない」とはいえ、最高値のタイミングは自分の投資設計を見直す良い機会でもあります。確認だけはしておきましょう。
① 積立額は無理のない範囲か
最低限、生活防衛資金として「生活費の3〜6ヶ月分」を現金で確保しているかを確認します。会社員なら3ヶ月、自営業や収入が不安定な人は6ヶ月が目安と言われています。
ここが不足している状態で積立額を増やしていると、急な出費が発生したときに、相場が下がっているタイミングで切り崩すことになりかねません。投資の前に守りの現金。順番が大事です。
② 投資信託の信託報酬は0.2%以下か
信託報酬は、投資信託を持っている間ずっと差し引かれるコストです。年率0.1%と1.0%では、20年・30年単位で見ると最終的なリターンに大きな差が出ます。
低コストの全世界株式・S&P500連動型のインデックスファンドであれば、信託報酬は年0.1〜0.2%程度に収まる商品が多くあります。自分が積み立てている商品の目論見書や商品ページで、信託報酬の数字を一度確認してみてください。
③ 分散できているか
特定の国・特定のテーマに偏っていないかの確認です。日本株だけ、米国IT株だけ、といったポートフォリオは、その分野が好調なときは強いですが、潮目が変わると一気に評価額が下がります。
迷う場合は、全世界株式インデックス、または米国全体に分散できるS&P500連動型を「コア」にするのが王道です。コアの上に趣味のサテライトを足すのは構いませんが、サテライトがコアを上回るような配分は避けたいところです。
「下がった時こそチャンス」になる積立投資の仕組み
積立投資には、地味ですが強力な仕組みが組み込まれています。毎月一定額を買い続けると、価格が安いときは多くの口数を買え、価格が高いときは少ない口数しか買えません。結果として、平均購入単価が自然と低めに抑えられます。
つまり、相場が下がったときは「同じ金額でたくさん仕込めるバーゲンセール」になるという発想です。最高値のときに買った分は確かに高値掴みになりますが、相場が落ち着いたときに積み立てた分が平均を引き下げてくれます。
ここで大事なのは、下がっても積立を止めないこと。怖くなって停止すると、安値で仕込むチャンスを自分から手放すことになります。長く続ける人だけが、この仕組みの恩恵を受けられます。
高値掴みパターン vs 積立継続パターン(10年後の試算イメージ)
あくまで考え方を整理するためのイメージです。実際のリターンを保証するものではありません。
| 項目 | 高値で一括投資 | 毎月積立を継続 |
|---|---|---|
| 投資タイミング | 最高値時に一括 | 毎月一定額・10年継続 |
| 価格変動への耐性 | 弱い(下落で一気に評価減) | 強い(下落時は多く買える) |
| 心理的な負担 | 大きい(毎日相場が気になる) | 小さい(自動で完結) |
| 平均取得単価 | 高くなりやすい | ならされて中間に収束 |
| 続けやすさ | 一度きりで完結 | 仕組み化できる |
数字を絶対視せず、「考え方の違い」を見るための表として使ってください。投資判断は最終的にご自身で行ってください。
家計の足元を整えてから、投資の話に戻る
最高値のニュースで気持ちが揺れる人ほど、実は投資より先に家計の足元を見直すと安心して積立を続けられます。
たとえば住宅ローンの金利は、長期金利の動きを受けてジワジワと水準が変わってきました。固定にするか変動にするかで毎月の支払いも大きく変わります。気になる方は住宅ローンの判定記事を合わせて読んでみてください。
物価高が続く中で、年間の固定費を9万円単位で削った家計見直しの考え方は家計の固定費見直し記事にまとめています。投資より先に、毎月の支出から「ほぼ自動で残る額」を増やすほうが、最高値相場でも気持ちがブレません。
よくある質問
Q. 日経平均が最高値なら、今は積立を止めたほうがいいですか?
A. 一般論として、積立投資は相場が高いときも低いときも続けることで効果を発揮する仕組みです。止めるかどうかは相場ではなく、「無理な金額になっていないか」「生活防衛資金は確保できているか」で判断するのが基本と言われています。最終的な判断はご自身の状況に合わせて行ってください。
Q. 今からNISAを始めるのは遅いでしょうか?
A. 「いつ始めるか」より「どれだけ長く続けるか」の方が結果に影響しやすいとされています。最高値のタイミングで一括投資するのは慎重に考えたいところですが、毎月の積立であれば、開始時期の影響は時間とともにならされていく性質があります。
Q. 積立額を最高値のうちに増やしたほうが得ですか?
A. 高値で増額するのは、定義上「高い価格でたくさん買う」ことになります。増額の判断は、相場ではなく、収入アップや支出減など家計側の変化で行うのが無難です。
Q. 個別株をNISA枠で買ってもいいですか?
A. 制度上は可能ですが、NISA枠は年間で上限があるため、コア資産にする指数ファンドの枠と相談しながら使うのが現実的です。短期で売買すると非課税のメリットを活かしきれない場合もあります。
Q. もし暴落したら、積立はどうしたらいいですか?
A. 過去の事例では、暴落時に積立を継続できた人ほど、その後の回復局面で恩恵を受けやすかったと整理されています。ただし、生活防衛資金を切り崩してまで継続するのは本末転倒です。家計の安全圏を確保した上で、淡々と続ける姿勢が基本です。
✅ 今すぐできること(1分)
証券口座にログインして、自分が積立している投資信託の「信託報酬」を1つだけ確認してください。年0.2%以下に収まっていれば、長期で持つコア資産として合格圏内です。0.5%や1.0%を超えているなら、低コストインデックスへの乗り換えを検討する価値があります。
最高値のニュースに反応して売買するのではなく、コストを確認する。これだけで、5年後・10年後の手取りリターンが変わってきます。
まとめ
日経平均が6万3339円と史上最高値を更新し、相場には熱気があります。しかし、積立NISAをしている人にとっては「何もしない」がいちばん難しく、いちばん正しい選択肢になりやすいタイミングです。
慌てて利確しない・増額しない・個別株に手を出さない。代わりに、生活防衛資金・信託報酬・分散の3点だけを静かに確認する。投資判断はご自身の責任と状況に基づいて行うものですが、相場の熱に流されない設計を持っている人ほど、長く続けられます。
文:S