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SES・SIer・自社開発の違い|未経験IT転職で知っておくべき3形態の比較

IT業界の3形態(SES・SIer・自社開発)の違いを、ビジネスモデル・働き方・年収・キャリアの主要な軸で比較。求人票で見分けるチェックリスト付きで、未経験から最初の1社を選ぶ判断材料がそろいます。

未経験からIT業界に入ろうとすると、求人票で必ず「SES」「SIer」「自社開発」という言葉に出会います。3つとも同じITエンジニアを募集しているように見えて、働き方も年収もキャリアの伸び方もまったく違うものです。違いを知らないまま応募して、入社後に「思っていた仕事と違う」になる。これは未経験IT転職でかなり多い失敗パターンです。

このページではSES・SIer・自社開発の3形態を、ビジネスモデル・働き方・年収・キャリアの主要な軸で見ていきます。応募前に求人票で見分けるためのチェックリストも、後半でまとめてあります。

⏩ 急いでいる方はこちら

  • 3形態の概要(後述の「3形態を一言で」)
  • 未経験者にとってのおすすめ度(後述の「未経験者向け」)
  • 求人票の見分け方(後述の「求人票チェックリスト」)
  • 今すぐできる1分アクション(記事末尾の「まとめ」)
  • 3形態を一言で

    それぞれを最短で言うと、こうなります。

    形態一言でビジネスモデル
    SESエンジニアを派遣して時間で稼ぐ客先常駐・準委任契約
    SIerシステム開発を一括で請け負う受託開発・請負契約
    自社開発自社サービスを作って運営する自社プロダクト

    働く場所、誰の指示で動くか、何を成果物にするか。3形態でこの3点が大きく違います。ここを最初に押さえておくと、以降の比較が頭に入りやすくなります。

    SES(システムエンジニアリングサービス)

    未経験OK求人で一番数が多いのがこのSESです。良くも悪くも、未経験IT転職の入口の8割はここを通ります。

    ビジネスモデル

    SES企業は自社のエンジニアを顧客企業(客先)に常駐させて、稼働時間(人月)で報酬を受け取ります。契約形態は準委任契約が中心。「成果物の納品」ではなく「労働時間の提供」を売っているビジネスです。

    エンジニアは自社(SES企業)に所属しながら、日々の勤務はクライアント先で行います。プロジェクトが終われば別のクライアントへ。常駐先が変わるたびに環境が変わるのがSESの特徴で、これが強みでもあり、弱みでもあります。

    働き方

  • 勤務地:客先常駐(自社オフィスにはほぼ行かない)
  • 上司:自社の営業+客先のリーダー(指揮系統が二重になりがち)
  • プロジェクト期間:3ヶ月〜数年(短期で入れ替わるケースも)
  • 業務範囲:客先の指示による(テスト中心、保守中心、開発中心など案件次第)
  • 年収

    未経験初年度は300〜350万円が中心。経験を積むと400〜500万円、上流工程に入れれば600万円超もあり得ます。ただ上限は自社の単価交渉力で頭打ちになりやすいのが現実です。情報処理・通信技術者の賃金水準は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2024年度版/https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html)で確認できます。

    強みと弱み

    強みは複数の現場を経験できること。業界・技術の引き出しが他形態より早く増えます。弱みは腰を据えた開発がしにくく、単価が会社次第、案件ガチャが避けられないこと。3年程度経験を積んでSIerや自社開発へ転職する人が多いのは、ここが理由です。

    ここで詰まる人が多い

    SES業界には「未経験OK+研修充実」を打ち出す会社が多くありますが、看板と中身がずれている率が高いのも事実です。求人票の「研修3ヶ月」が実際には1週間の座学だけ、というケースは珍しくありません。研修内容と過去の未経験者の配属先実績、これだけは面接で必ず聞いておきたいところです。

    SIer(システムインテグレーター)

    SIerは「システムを作って納める会社」。SESより自社オフィスでの勤務比率が高く、業務知識が体系的に身につきやすい形態です。

    ビジネスモデル

    顧客企業のシステム開発を一括で請け負い、要件定義から設計、開発、テスト、運用までを契約上の成果物として納品します。契約形態は請負契約が中心で、「期日までに動くシステムを作る責任」を負うビジネスです。

    ただSIerには階層があり、元請け(プライム)→ 一次請け → 二次請け → 三次請けと仕事が下りていく構造になっています。元請けは要件定義や全体設計、下請けに行くほど実装やテストの比重が大きくなります。同じ「SIer」と一括りにされていても、元請けと三次請けでは仕事の中身がまったく違うので注意が必要です。

    働き方

  • 勤務地:自社オフィス+客先打ち合わせ(プロジェクトによる)
  • 上司:自社の上司(指揮系統は明快)
  • プロジェクト期間:半年〜数年(規模が大きい)
  • 業務範囲:階層に応じた工程を担当
  • 年収

    元請けSIer(大手)の未経験初年度で350〜450万円、中堅で300〜400万円、下請け中心の中小SIerは300万円前後が目安。経験を積むと元請けで600〜800万円、二次請け以下では500万円前後で頭打ちになりがちです。

    強みと弱み

    強みはプロジェクト単位で業務知識(金融・物流・公共など)が深まること。弱みは階層下位だと開発以外の作業(資料作成、会議参加)が多くなりやすいことです。プロジェクトマネージャー、ITコンサル、自社開発の上流職に進む人が多いキャリアパスを取ります。

    ここで詰まる人が多い

    「SIer 自社開発」と求人票で書いていることがあっても、実態が「客先常駐型のSES」というケースもあります。請負か準委任か、常駐先はどこか。このあたりを面接で確認するまで、本当のところは見えません。

    自社開発(Self-Developed Service)

    結論から言うと、未経験で自社開発企業に直接入るのは現実的ではありません。

    求人で見かける機会が多いので「いつかは自社開発」と思う未経験者が多いのですが、自社開発企業の多くは中途採用で経験者を採用します。未経験OKの自社開発を見つけたとしても、内訳を見ると「自社サービス+受託開発の併用」で、実態は受託開発の比率が高い会社が多いのが現実です。

    未経験初年度の年収は350〜500万円が中心。経験を積むと500〜800万円、シニア・テックリード級で1000万円超もあり得ます。技術選定の自由度が高く、プロダクトを育てる経験が積める強みは確かにありますが、入口がそもそも狭い。

    未経験から自社開発を狙うなら、SESかSIerでまず3年程度の実務経験を作ってから、転職で挑むのが標準ルートです。「未経験OKの自社開発」を見つけたら、採用形態(正社員か契約社員か)と業務内訳(自社サービスの売上比率)を求人票・面接で必ず確認してください。

    主要項目の比較表

    3形態の主要な差を1枚にまとめると、こうなります。

    比較軸SESSIer自社開発
    勤務地客先常駐自社+客先自社+リモート
    指揮系統二重(自社+客先)自社中心自社のみ
    成果物労働時間システム納品プロダクト
    未経験初年度300〜350万円300〜450万円350〜500万円
    未経験求人数多い中程度少ない
    研修体制会社差が大きい大手は手厚い企業差が大きい
    キャリアの幅複数現場経験業務知識深化プロダクト経験

    未経験者向け|どこから入るのが現実的か

    未経験からIT業界に入る場合、入りやすさは「SES > SIer(中堅以下)> SIer(大手元請け)= 自社開発」の順です。差は単純に未経験OK求人の絶対数。

    接客業・異業種からの転職を考えるなら

    接客業やサービス業からIT転職する人にとって、最初の1社の選び方の優先順位はこんな感じです。

  • 1社目の優先度1:研修内容(座学だけか、実機を触れるか)
  • 1社目の優先度2:配属先の実績(過去の未経験者がどんな現場に入ったか)
  • 1社目の優先度3:3年後の想定キャリア(経験者として転職する前提か、長期前提か)
  • 年収優先度は最後(1社目で年収を最大化しようとするとミスマッチになりがち)
  • 職業訓練校経由で入る場合は、訓練校の就職支援担当に「過去の修了生がどの形態に多く入っているか」を聞いておくと、その地域での実情が見えます。地方ではSES比率が高く、都市部では選択肢が広がるのが一般的な傾向です。

    「最初はSES、3年後にSIerか自社開発」というのが現実解

    未経験で自社開発に直接入るのが難しい以上、SESで3年程度の実務経験を積んでから次の転職で自社開発を狙う、という段階的なキャリアが現実的なルートです。SES企業を選ぶときも、「次の転職で評価される現場に入れるか」を基準にすると、長期で組み立てやすくなります。

    このパスでよく言われるのが「最初のSES企業の質より、最初のSESで入った現場の質の方が、将来の転職市場価値に効く」という話。会社で選ぶより案件で選ぶ。この発想を持っておくと、SES企業の比較がしやすくなります。

    求人票チェックリスト|SESかSIerか自社開発か見分ける10項目

    求人票の文言だけでは形態が見分けにくいので、応募前に次の10項目を確認すると失敗が減ります。

  • 契約形態の記載:「準委任契約」とあればSES寄り、「請負契約」とあればSIer寄り
  • 勤務地の記載:「プロジェクトにより異なる」「都内各所」はSESの可能性が高い
  • 案件の表現:「自社サービス開発」と明記されているか、「客先常駐」となっているか
  • 自社プロダクトの紹介:会社サイトに自社サービス紹介があるか
  • 受託開発比率:受託開発が大半か、自社サービスが主軸か
  • 客先常駐の頻度:「常駐ありの場合あり」と但し書きがあるか
  • 研修内容:座学のみか、OJTがあるか、期間と内容
  • 配属先実績:過去の未経験入社者の配属先パターン
  • 評価制度:自社評価が中心か、客先評価に左右されるか
  • 離職率:3年以内離職率の開示があるか(求人票になければ会社採用情報・OpenWork等のクチコミで確認)
  • 会社サイトとOpenWork等のクチコミを併用すると、求人票と実態のギャップが見えてきます。

    E-E-A-T|情報の出どころ

    公的な出典は以下です。

  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2024年度版参照)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
  • 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア」「プログラマ」 https://shigoto.mhlw.go.jp/
  • 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(最新報告書参照)https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/
  • 年収レンジ・未経験求人数の傾向・キャリア事例は、未経験IT転職市場の一般的な傾向と、3形態それぞれで働いた人の知見から組み立てた内容です。記事内の年収数値は業界一般の目安で、企業規模・地域・年度・契約形態によって実際の数値は大きく変わります。応募先企業の正確な数字や実態は、求人票・面接・エージェントへの個別確認で必ず把握してください。

    まとめ|SES・SIer・自社開発をどう選ぶか

    3形態の違いを踏まえると、未経験者の現実的な選び方は3つに分かれます。

    入りやすさで決めるならSESから始めて3年で次に進む段階的キャリア。業務知識を体系的に積みたいなら中堅SIerでプロジェクト経験を作る。プロダクト経験が欲しいなら、まずSESかSIerで実務経験を作ってから自社開発に挑むのが王道です。

    どの形態を選んでも、3年後の転職で軌道修正は可能です。最初の1社を選ぶときに大事なのは年収の高さではなく、「次の転職で評価される現場に入れるか」。これを軸に選ぶと、入社後の後悔が減ります。

    ✅ 今すぐできること(1分)

    応募候補に入っている求人票を1つ開いて、上の「求人票チェックリスト10項目」のうち1つ目(契約形態の記載)と3つ目(案件の表現)だけ見てみてください。「準委任契約」「客先常駐」が出てくる求人と「自社プロダクト開発」が出てくる求人とでは、最初の1社の意味がまったく変わってきます。

    求人票だけで分からないなら、エージェント面談で「準委任か請負か」「自社サービスの売上比率」と直接質問すれば答えてくれます。エージェントは企業側に確認できる立場なので、応募前に判断材料を揃えてもらうのが一番早いです。


    執筆:S(接客業から職業訓練校を経てIT転職した立場で、未経験者向けの実用記事を中心に発信しています)

    よくある質問

    Q. SES・SIer・自社開発の中で、未経験からでも入りやすいのはどれですか?

    A. SESと中小SIerは未経験採用が多い傾向があります。自社開発企業は経験者採用が中心ですが、業界・規模によっては未経験可のポジションもあります。

    Q. 自社開発企業に転職するメリットとデメリットを教えてください。

    A. メリットは1つのプロダクトを深く育てられること、エンジニアの裁量が大きい場合が多いことです。デメリットは技術スタックが固定されやすいこと、会社の業績が直接影響することです。

    Q. SES企業に入社した後、自社開発企業へ転職するのは難しいですか?

    A. 2〜3年のSES経験でスキルを積めば転職は可能です。常駐先でどんな技術・規模の開発経験を積んだかをポートフォリオや職務経歴書で整理しておくことが転職成功のカギです。

    【免責事項・情報確認日について】

    本記事の情報は2026年5月12日時点のものです。転職・副業・投資(NISA等)に関する制度・サービス内容は変更される場合があります。掲載情報の正確性には努めていますが、最終的なご判断はご自身でご確認のうえ行ってください。本記事は特定のサービスへの加入や投資行動を推奨するものではありません。

    #SES#SIer#自社開発#未経験IT転職#IT業界#求人比較

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